筆界特定手続きについて

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不明の境界を確定するための制度

土地の境界は、公で使われる境界線なので、私人間で勝手に決めてしまうことはできません。それなりの公の手続きを経た上で、決定されなければならないのです。

 

筆界特定制度は、裁判所を利用しないで、行政つまり登記官が、より簡易かつ迅速な手続きしたがって、筆界を特定する制度です。

 

不動産登記法によると、「1筆の土地およびこれに隣接する他の土地について、筆界の現地における位置を特定すること」と定義されています。

 

筆界を特定する登記官は、すべての登記官がその権限をもっているわけではなく、指定を受けた「筆界特定登記官」が特定を行います。

 

筆界特定登記官を指定するのは、問題となっている土地の所在地を管轄する法務局または地方法務局の長です。

 

この制度の趣旨は、迅速かつ適正な筆界の特定による、紛争の早期解決にあります。そのため、法務局または地方法務局の長は、手続処理の標準的期間を定めて公表しなければなりません。

 

また、筆界は公法上の境界であることから、特定にあたっては詳細な事実調査と専門的な知識・経験が要求されます。そこで、必要な調査と意見を筆界特定登記官に提出する「筆界調査委員」が任命されます。

 

筆界特定手続きの流れ

ここでは、手続きの流れを見ていきます。

 

① 申請

筆界の特定は、申請から始まります。つまり、筆界について紛争が生じた場合、その土地の所有権登記名義人などが、筆界特定登記官に対して、紛争となっている土地の間の筆界を特定するように申請を行います。

 

申請は、対象となる土地の所在地を管轄する法務局または地方法務局の筆界特定登記官に対して行います。

 

申請の際には、申請人の住所・氏名の他、対象となる土地に関する情報(筆界特定申請情報を示すことになります。また、申請には、手数料も必要です。

 

② 申請に不備があった場合

申請されると、筆界特定登記官は、その申請に手続上の不備がないかを審査します。

 

具体的には、土地の管轄があっているか、所定の手数料が納付されているか、申請人に申請権限があるか、といったことを審査します。

 

もし、不備があっても即刻却下というわけではなく、通常は、登記官がふびを指摘し、手直し(補正)するように求めてきます。

 

補正されなかったり、管轄が異なっている場合には、申請は却下されてしまいます。

 

③ 関係人への通知

筆界特定は申請人だけの問題ではなく、隣接した土地の所有者といった利害関係人の問題でもあります。そのため、筆界特定申請があれば、筆界特定登記官はなるべく早く、申請があったことを公告(広く一般に知らせること)します。

 

また、申請人以外で、対象となっている土地の所有権登記名義人などの関係人には、個別に通知をします。

 

④ 筆界調査委員とは

土地の境界といっても公法上のものなので、特殊な専門的知識が必要になります。

 

そこで、申請後に公告・通知が行われると、法務局(地方法務局)の長は、弁護士・司法書士・土地家屋調査士の中から筆界調査委員を任命します。

筆界調査委員は、専門的な知識を駆使して、筆界特定をサポートしていきます。

 

⑤ 資料の収集

筆界の特定にあたっては、詳細な資料を収集しなければなりません。

 

そのため、公告から特定までの間に、申請人や関係人は、対象土地の筆界について、意見を述べたり資料を提出することができ、筆界特定登記官は、そのための機会を与えなければなりません。

 

また、法務局(地方法務局)の長は、筆界特定のために必要があるときには、関係する行政機関の長・地方公共団体の長・公私の団体に対して、資料の提出その他必要な協力を求めることができます。

 

筆界特定のための資料を提出するときを「期日」といいますが、筆界特定登記官は、この期日において、参考人に知っている事実の陳述をさせることができます。

 

一方、筆界調査委員は、期日には立ち会う義務があり、筆界特定登記官の許可を得たうえで、関係人に対して質問をすることが認められています。

 

なお、申請人と関係人は、公告から申請人に対する通知までの間、筆界特定登記官に対して、手続中に作成された調書や提出された資料の閲覧を請求する権利があります。

 

正当な理由がない限り、筆界特定登記官は、この請求を拒絶することはできません。

 

⑥ 筆界の特定

以上の手続きに従って必要な調査が終了したら、筆界調査委員は、なるべく早く、筆界特定についての意見を筆界特定登記官に提出します。

 

この意見をふまえ、筆界特定登記官は、資料その他の各種事情を総合的に考慮して、筆界を特定します。なお、結論と理由の要旨は「筆界特定書」という書面に記載されます。

 

筆界を特定したら、筆界特定登記官は、なるべく早く、筆界特定書の写しを申請人に交付し、公告もします。さらに、関係人に対しても通知をすることになります。