令和元年度 問題14

登記の代位申請に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

 

 

ア 土地区画整理事業の施行者は、土地区画整理事業の施行のために必要がある場合においても、所有権の登記名義人に代位して、土地の分筆又は合筆の登記を申請することはできない。

 

イ 一筆の土地の一部について地役権の設定を受けた地役権者は、当該土地の所有権の登記名義人に代位して、その一部分を分筆する分筆の登記を申請することができる。

 

ウ 一筆の土地の一部について処分禁止の仮処分命令を得た債権者は、当該仮処分命令の正本を代位原因を証する情報として、当該土地の所有権の登記名義人である債務者に代位して、その一部分を分筆する分筆の登記を申請することができる。

 

エ 一筆の土地について相続人A及びBを所有権の登記名義人とする法定相続分に応じた相続による所有権の移転の登記がされた後に、当該土地を二筆に分筆してA及びBがそれぞれ一筆ずつ取得する内容の遺産分割調停が成立した場合には、当該遺産分割調停の調停調書の正本を代位原因を証する情報として、Aは、単独で、Bに代位して、当該土地の分筆の登記を申請することができる。

 

オ A及びBが所有権の登記名義人であり、地目が農地である土地について、農地法所定の許可を受けた上で宅地としたにもかかわらず、Bが地目の変更の登記の申請に応じないときは、Aは、Bに代位して、当該土地の地目の変更の登記を申請することができる。

 

 

1 アイ   2 アエ   3 イオ   4 ウエ   5 ウオ

 

 

正解 4

ア ×

土地区画整理事業の施行者は、土地区画整理事業の施行のために必要がある場合には、所有権の登記名義人に代位して、土地の分筆又は合筆の登記を申請することができる。

 

イ ×

一筆の土地の一部について地役権の設定を受けた地役権者は、当該土地の所有権の登記名義人に対する地役権設定登記請求権を取得するが、一筆の土地の一部についての地役権の設定の登記は、分筆の登記をしなくてもすることができるので、当該地役権設定登記請求権は、分筆の登記をしなければ保全されない債権とはいえない。したがって、当該地役権者は、当該土地の所有権の登記名義人に代位して、当該土地の分筆の登記を申請することはできない。

 

ウ 〇

一筆の土地の一部について処分禁止の仮処分命令を得た債権者は、当該仮処分命令の正本を代位原因を証する情報として、当該土地の所有権の登記名義人である債務者に代位して、その一部を分筆する分筆の登記を申請することができる。

 

エ 〇

共同相続の登記後、当該土地を数筆に分筆し分筆後の土地をそれぞれ相続人らの一部の者の単有又は共有とする旨の遺産分割の調停が成立した場合において、右調停に基づく土地の分筆の登記をなすにつき他の共同相続人の協力が得られないときは、当該土地の一部を相続することとなった者は、右調停調書の正本又は謄本を代位原因を証する情報とし協力を得られない者に代位して分筆の登記を申請することができる。

 

オ ×

共有である土地の地目の変更の登記の申請は、共有物の保存行為として、共有者のうちの1人からすることができるので、保全すべき債権がなく、共有者のうちの1人が他の共有者に代位して地目の変更の登記を申請することは認められない。その必要もない。